「 妊娠中の痔 」 の項目一覧
- 妊娠中に痔が悪化する理由
妊娠・出産は、痔を悪化させる原因となります。その兆候のある女性は、妊娠する前に是非、きちんとした治療を受けておくことが必要です。
妊娠・出産が痔を悪くする理由として次の4点が考えられます。
?血液のうっ血
妊娠すると、骨盤の中に血液が集まるため、肛門周辺の静脈の血液循環が妨げられて、肛門部にウッ血を起こすようになります。さらに、妊娠後期になると、お腹の赤ちゃんが大きくなって血管を圧迫しますから、血液の環流がますます悪くなり、ウッ血が強まるのです。?圧力が強くかかる
お腹の赤ちゃんが大きくなってくると、その重みで肛門に圧力がかかります。トイレでしゃがんでいるのと同じことですから、ウッ血が高まり、痔を悪くします。?便秘をしやすくなる
妊娠初期は、ホルモンの関係で便秘をしやすくなります。そのころは黄体ホルモンの分泌が多くなりますが、このホルモンは妊娠を持続させる働きがあるだけでなく、便までお腹の中に留めるよう作用するのです。また、つわりで食事の量が少なくなる時期でもあるため、便量が減って便意がつきにくくなります。
一方、妊娠後期になると、大きくなった子宮に腸が圧迫され、便の通過が妨げられます。これもまた、便秘を悪化させる原因になります。?お産のときにいきむ
お産するときは、どうしても強くいきみます。このいきみが肛門のウッ血を強め、圧力がかかって痔核(イボ痔)が脱出したり、脱肛を起こしやすくなったりします。- 妊娠中の注意点
妊娠中は骨盤内のウッ血が強まり、肛門に圧力がかかるのは、いたし方のないことです。お産の時にいきまないわけにもいきません。対策を講ずることができるのは、便秘を予防することだけなのです。
妊娠中に便秘を予防するには、何よりもまず、きちんとした食事と排便の習慣をつけることです。食事では果物、野莱、海草、きのこ、豆類など、食物繊維の多いものを十分とるようにしましょう。水分も不足しないよう補給してください。
つわりで食欲のない時期におすすめしたいのは、ヨーグルトなどの乳酸菌飲料です。腸内によい細菌を増やして、お通じをよくしてくれます。そして、毎日決まった時間にトイレに行き排便するよう習慣づける努力をしてください。
妊娠中は、はげしい運動やお腹に力の加わる体操を避けなければなりませんが、運動不足にならないよう散歩などをするのは便秘予防上いいことです。
なお、便秘薬を使用する時は、必ず医師の指示に従ってください。薬の使い方を誤って下痢をすると、流産を誘発することもあり危険です。
- 妊娠中に痔が悪化した場合
妊娠中に、もし痔の出血が始まったり、痔核(イボ痔)が脱出するようになったりしたら、迷わず肛門科の専門医にかかり、治療を受けましょう。貧血でも起こせば、妊娠の経過に悪い影響を及ぼしますし、イボが出ていれば、不快で痛むようにもなるからです。
医師の手当てを受ければ、手術以外の方法で、十分症状を改善することができます。もし手術が必要であっても、お産まで持ちこたえられるよう処置をしておき、産後の回復を待ってから手術を行います。
裂肛(切れ痔)や痔ろう(あな痔)にしても、妊娠中は手術以外の方法で処置し、お産がすんでから手術することになります。
痔をわずらっている妊婦の方は、かかりつけの産婦人科医に相談し、肛門科の専門医に診てもらいながら出産していただきたいものです。